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アフロスポーツインタビュー vol.3 松尾憲二郎

日本オリンピック委員会(JOC)の公式記録撮影を担当する「アフロスポーツ」。
アフロスポーツのフォトグラファーに東京オリンピックに向けた意気込みを聞きました。三人目は自身もスキーの競技経験をもつ松尾憲二郎。

「アスリートのエネルギーを写真で受け止めたい」

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アフロスポーツ 松尾憲二郎

―東京オリンピックの開催が決まった翌年の2014年からアフロスポーツとして活動していますね。その頃のことは覚えていますか。

ぼく東京生まれ東京育ちなんで、東京オリンピックってでかいですよね。開催が決まったときは、ホームタウンでオリンピックやるってキラキラしたものをすごく感じましたね。当時はフリーランスのカメラマンで、冬になると雪山に登って撮影に明け暮れていました。色んなスポーツを撮ってみたいという気持ちはあって、そこで東京開催が決まったので、じゃあオリンピック撮るかって。それでアフロに入りました。東京オリンピックにピークをもってくるというか、東京オリンピックまでに一人前のスポーツカメラマンとしてやっていけるようにしたいなと思っていましたね。

―結果的に7年を経ての開催ですが、今の率直な気持ちは。準備は整ったと感じますか。

やっと、ついに、ようやく。色んな言葉が思いつきますよね。準備が出来ているような出来てないような。割と自然体でここまで来れていると思っています。どうなろうとも対応できるかなって。でもあんまり対応しすぎるのも好きじゃなくて、許容範囲を超えている方が嬉しいんです。既定路線っていうんですか、それだとなんか面白くない。不予定調和を狙っています。

僕の中でスポーツ写真は反応、反射の世界です。どの競技でも。ある程度の偶然に任せるしかない場面もあります。ただそんな場面でも偶然起こった出来事にすぐに反応して、それをキャッチする能力を持ってれば良い話で。物理的に運動能力を上げて、反応スピードを上げる準備をしています。僕自身もともとスポーツをやっていたので、その辺りの自信はあるんですよ。それを上手く使っていくしかないですね。予定されてないことを予定にしておく、不予定調和っていうのはそんな意味でもあります。

―ずばり、東京オリンピックではどんな写真を撮りたいですか。

すべての競技に言えることではありますが、やっぱりオリンピックは特別で、アスリートは4年に一度の大舞台に懸けています。選手によっては4年、8年、12年、人生そのものを懸けていますから。オリンピックの現場からはそのエネルギーが出ているはずで、そういったものを写真で受け止めたい。受け止めて写真で表現したいと思っています。

選手のエネルギーという意味で、撮れたなと感じるのはこの一枚です。
2019年に大阪で行われた、柔道グランドスラム男子66kg級 決勝戦の阿部一二三選手。

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2019 グランドスラム 大阪 男子66kg級 決勝 で丸山選手と対決する阿部一二三選手
aflo_117147550(松尾憲二郎/アフロスポーツ)

この大会でも彼は丸山城志郎選手とオリンピック代表の座を争っていて、情勢は丸山選手有利でした。ここで負ければ丸山選手に決定、代表入りを逃してしまう。代表入りのチャンスを掴むためにはここで勝つしかない。まさに絶体絶命の場面です。本当に追い詰められてる。負けられない。下がれない。やるしかないっていう試合でした。それが正直に出ている写真だと思います。

撮りたい写真というと、分かりやすく言えば盛り上がっているところと盛り下がっているところ。上にも下にも波長がピークの時ですね。その写真を残していきたいです。写真って動画と違って前後関係が無いので、想像するしかないじゃないですか。だから両方のピークの写真があることによって、見る人がその間を想像できると思うんですね。その人がもっているほかの情報とリンクすることもあると思います。そうやって想像が進んで、面白い世界が広がればいいなと思っています。

―写真をきっかけに、新たな世界が始まっていくイメージですね。

はい。もちろん僕の写真だけでも楽しんでもらったら嬉しいんですけど、プラスアルファの化学変化っていうか、爆発が起きることを期待しています。

平昌オリンピックで撮影した写真の中で、お気に入りの写真があって。スピードスケート女子500mで小平奈緒選手が金メダルを取ったレースです。

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2018 平昌五輪 スピードスケート 女子 500m 金メダルを獲得した小平奈緒選手
aflo_72420837(松尾憲二郎/アフロスポーツ)

この写真に関して、小平選手ご本人とインスタグラム上でメッセージを交換しました。スピードスケートの500メートルって40秒足らず、本当にあっという間に終わってしまうんですが、小平選手は途中の100メートル区間の記憶が無いらしいんです。この写真がちょうどその間の写真なんですね。500メートルのうち小平選手が覚えている部分と覚えていない部分があって。でも覚えていない部分には僕の写真がある。彼女の記憶と僕の写真を足すと1になる。それがすごい面白いなって。僕の想像を超えた世界になりましたね。

これはひとつ写真のうまみ成分ですよね。そういう考えだったのか、ああそうだよねとか、僕の撮った写真がそんなやり取りのきっかけになるといいなと思います。写真を見て終わりじゃない、その先のきっかけになる写真。僕が撮りたい写真っていうのはそういうものです。

―それでは最後にひとこと、意気込みをお願いします。

本当に色々期待しています。オリンピックそのものにも、自分自身にも期待しています。選手が懸けているものを受け止めるっていう表現になるのかな。受け止める側もそれなりのものがないと受け止められないので、選手と同じエネルギー量で臨みたいです。エネルギーが爆発するところ、ゼロになるところ両方を写真に残したい。アスリートのパフォーマンスはその時限りでも、写真はずっと残りますから。

フォトグラファープロフィール

アフロスポーツ 松尾憲二郎 https://sport.aflo.com/matsuo/

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個人インスタグラム @kenjiromatsuo34

アフロスポーツの写真展を開催しています!

2021年7月2日(金)~8月25日(水) 10時~17時30分

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